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2021/05/20
日経新聞小説 伊集院静「ミチクサ先生」所縁の話題と資料(2)
先日から日本経済新聞掲載の伊集院静氏の小説「ミチクサ先生」の連載が、当館所蔵資料にゆかりの内容となってきたため、小説を楽しむよすがに該当資料とその概説を紹介させて頂いています。
今日のゆかりの品は「夏目漱石発 小宮豊隆宛書簡(明治39[1906]年8月28日)」です。
小説は現在『吾輩ハ猫デアル(以下「猫」)』が爆発的にヒットとしたことで、自らの才能への気付きと進むべき道に迷う漱石が描かれていますが、リアルライフにおいてもそのことを本人が、ユーモアを交えて門弟・小宮豊隆宛に告白している手紙がこれです。
注目は何といっても本人自筆の「猫姿の自画像」です。実際には大阪滑稽新聞に「大ヒット小説『猫』を書く小説家は、タイトルからするとこんな御仁だろう」と当該新聞社がおふざけで制作・掲載したイラストだったのですが、これを見た漱石の講義を受講する関西出身の学生が、絵を切り抜いて漱石に送ったものを、本人がいたく気にいって模写し、これを小宮宛の手紙に書き添えたのです。
多分漱石は「これが僕の姿だってさ。笑っちゃうよなハハ、小宮君!なかなかよくできてるから君にも見せてあげるよ!」と素直にユーモアを受け取りつつ、門弟の中ではまだ引っ込み思案で「奥手」だった小宮を励ます気持ちで描いたようにも思えます。
真相はともかく漱石が複写とはいえ、こんなにユーモアたっぷりでシンプルな自画像を描いたのは生涯唯一のようであり、貴重な自画像となっています。
当館ではこの手紙を常設公開資料として展示していますので、コロナ禍が落ち着いたら(現在残念ながら5月末まで臨時休館中!)ご覧にお越しになりませんか?あなたもこれを見て「クスリ」とやって、ストレスの多い昨今の「薬」にしては如何でしょう…。
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2021/05/17
日経新聞小説 伊集院静「ミチクサ先生」ゆかりの話題と資料
当館では館蔵資料ゆかりの情報や発信があった場合、適宜広報や紹介を心掛けていますが、このたび日本経済新聞に連載中の伊集院静氏の小説「ミチクサ先生」にゆかりの記事がみられましたのでご紹介します。
「ミチクサ先生」は文豪・夏目漱石が主人公で、漱石は近代文学やそのための文体を一人で編み出したともいわれています。その過程における様々な出逢いを伊集院氏は「道草」に例えて、ある時は愉快にある時は切なく表現したいと述べられ、小説はその想いを反映しながら進んでいます。
最近の掲載は、漱石が有名な「吾輩ハ猫デアル」を発表して超売れっ子となる一方、兼ねて考えていた専業作家への道を模索するという筋になってきていますが、ここでの道草相手の一人として「小宮豊隆」の名が紹介されていました。
小宮がストーリーの中でどういうかかわりを見せるのかは今後のお楽しみですが、当館にはちょうどその頃の小宮の肖像写真がありますので小説の参考になればと考えご紹介します。
写真は明治38(1905)年11月、小宮が東京帝国大学独文学科に入学し、寮生活をともにし始めた青雲寮の仲間たちと記念に撮ったもので、気心が知れ始めた仲間たちと気さくな思いで撮ったもののようです(小宮は立ち姿の左側の青年)。このころの小宮は漱石からも「君は遠慮し過ぎだよ」とたしなめられるほど田舎出の引っ込み思案の青年だったようですが、漱石と交流を重ねるうち、引っ込んでいた個性が花開くようになってゆきます。
なお、写真右斜め下のメガネをかけた青年は、のちに同じ漱石門下となる野上豊一郎で、漱石十弟子たちの繋がりが視覚で確認できるごく最初期の写真として注目されます。
この写真を参考にしていただくことで、漱石に深くかかわることになる弟子・小宮豊隆の存在とともに、当時時代の最先端を担うと自負していた帝大生に代表される社会の風俗も見えてきて、小説を楽しむ材料になるようであれば幸いです。
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